ゲノム編集分子を高効率に細胞内に導入可能な変幻自在ポリマーを開発
【ポイント】
- ゲノム編集分子の形や電荷分布を認知して変形し、強く相互作用する変幻自在ポリマーを開発した。
- 度重なる改良の末、細胞内の環境を認知して適宜に変形することでゲノム編集分子を高効率に細胞核まで運ぶ第 5 世代の「変幻自在ポリマー (5G)」を開発した。
- 変幻自在ポリマー (5G) の安全性およびゲノム編集分子導入効率は、最高水準の市販品よりも優れる可能性が示唆された。
- 【概要説明】
熊本大学大学院先導機構の東 大志准教授、同大学大学院薬学教育部博士後期課程 2 年の田原春 徹大学院生らのグループは、ゲノム編集分子である Cas9 RNP という分子を高効率に細胞内に導入するためのキャリア「変幻自在ポリマー」を開発しました。変幻自在ポリマーは、Cas9 RNP の複雑な形や電荷分布を認知して変幻自在に変形し、非常に強く Cas9 RNP と相互作用しました。さらに改良を重ね、細胞内の環境に応じて適宜に変形可能な第 5 世代の変幻自在ポリマー (5G) を開発しました。変幻自在ポリマー (5G) は、その変形能を駆使して、細胞内で待ち受ける多くの関門 (細胞内取り込み、エンドソーム脱出、細胞内での Cas9 RNP の放出、核移行など) を突破し、最高水準の市販品よりも優れた安全性や Cas9 RNP 導入効率を有することが示唆されました。変幻自在ポリマーは理論上、Cas9 RNP のみならず、他のゲノム編集分子、タンパク質、抗体、核酸 (siRNA、メッセンジャー RNA など) にも応用可能であることから、万能型キャリアとして期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌?Applied Materials Today?において、令和 4 年 4 月 22 日に公開されました。また本化合物は、Cas9 RNP 導入用試薬として、株式会社サイディンからも提供が可能です。本研究は、内藤記念科学振興財団、文部科学省卓越研究事業、科学技術振興機構研究成果最適展開支援プログラム、日本学術振興会特別研究員制度などの支援を受けて実施されたものです。
【論文情報】
論文名:Polyrotaxane-based Multi-step Transformable Materials for the Delivery of Cas9 Ribonucleoprotein
著者:Toru Taharabaru, Takuya Kihara, Risako Onodera, Tetsuya Kogo, Kenjirou Higashi, Kunikazu Moribe, Teruya Nakamura, Keiichi Motoyama, Taishi Higashi
掲載誌:Applied Materials Today
doi:doi.org/10.1016/j.apmt.2022.101488
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352940722001238
【詳細】 プレスリリース(PDF1094KB)
お問い合わせ
熊本大学大学院先導機構
担当:准教授 東 大志
電話:096-371-4168
E-mail:higashit※kumamoto-u.ac.jp
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