分子医薬品がヒト脳に届くかわかる「階層スフェロイド型ヒト血液脳関門モデル」の開発に成功
【ポイント】
- 本研究では、独自に樹立した三種の可逆的不死化細胞を階層状に組み合わせることにより、ヒト生体の血液脳関門を模倣した構造を持つ「階層スフェロイド型ヒト血液脳関門モデル」を開発しました。
- 本モデルは、抗体医薬やペプチド医薬がヒト脳へ届くか、ヒトに投与することなく評価することを可能とし、これにより中枢神経系疾患に対する新薬の創出に貢献すると期待されます。
- 本研究は、主に産学共同研究体制「B4-Quartet」の活動の一環として実施しました。
【概要説明】
近年、抗体やペプチドは脳へ薬物を届けるための薬物送達キャリアとして注目されています。その開発過程では、ヒト血液脳関門を越えて脳へと到達する抗体やペプチドを見出す必要があり、これを効率的?的確に評価するための創薬基盤技術が必要とされています。
これに対し本研究では、ヒト可逆的不死化細胞を立体的かつ階層状に組み合わせて、ヒトの血液脳関門を形態学的にも高度に模倣する新たなヒト血液脳関門モデル「階層スフェロイド型ヒト血液脳関門モデル」を開発しました。さらに本研究では、このモデルを用いることにより、複数の抗体やペプチドのヒト血液脳関門透過性を評価することが可能であることを明らかとしました。このことは、ヒトに投与せずともヒト脳に届く抗体やペプチドを見出し得ることを示唆しています。本モデルは、新たな創薬基盤技術として中枢神経系疾患に対する抗体医薬?ペプチド医薬開発を飛躍的に促進させることが期待されます。
この研究成果は、アメリカ化学会が発行する Molecular Pharmaceutics 誌 で 、 2022 年 6 月 30 日に公開されました。 また、関連するプロトコールの詳細は、 Bio-protocol 誌で、近日公開予定です 。
【論文情報】
A human immortalized cell-based blood-brain barrier spheroid model offers an evaluation tool for the brain penetration properties of macromolecules
Keita Kitamura, Ayaka Okamoto, Hanae Morio, Ryuto Isogai, Ryo Ito, Yoshiyuki Yamaura, Saki Izumi, Takafumi Komori, Shingo Ito, Sumio Ohtsuki, Hidetaka Akita, Tomomi Furihata.
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.molpharmaceut.2c00120
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Generation of a Human Conditionally Immortalized Cell-based Multicellular Spheroidal Blood-Brain Barrier Model for Permeability Evaluation of Macromolecules
Ryuto Isogai, Hanae Morio, Ayaka Okamoto, Keita Kitamura, Tomomi Furihata.
DOI: https://doi.org/10.21769/BioProtoc.4465
【詳細】 プレスリリース (PDF1661KB)
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