今までにないエイズウイルス感染細胞除去法の開発-エイズ完治への第一歩-
 熊本大学大学院生命科学研究部 生体機能分子合成学分野の立石大 大学院生、大塚雅巳 教授、熊本大学薬学部附属創薬研究センターの藤田美歌子 准教授らは、新しいエイズウイルス感染細胞除去法を開発しました。
 
 近年、複数の抗エイズ薬を用いる多剤併用療法の進展により、エイズウイルス感染者体内でのウイルス増殖を抑えることが可能となりました。しかし、感染者体内からウイルスを完全に駆逐することはできません。ウイルスはリザーバーと呼ばれる特別な細胞内に潜伏して生き残ってしまいます。リザーバー内のウイルスをいかにして除去するかが現在のエイズ研究における最大の課題です。
 
 数年前に開発された「kick and kill法」は、リザーバー細胞にある種の薬剤を作用させ、中で潜伏しているウイルスを活性化(kick)させたところでリザーバー細胞を殺す(kill)というウイルス駆除法です。ところが、薬剤でウイルスを活性化することはできても、効率良く細胞を殺せない、という問題がありました。
 
 本研究では新しく「Lock-in and apoptosis法」という方法を開発しました。ウイルス感染細胞に今回開発した新たな化合物「L-HIPPO」を導入すると、ウイルスの出芽が抑えられ、ウイルスが細胞内に閉じ込められて出てこられなくなります。その細胞は細胞死を起こして自然に死ぬ仕組みです。
 
 リザーバー内のウイルスを活性化させる薬剤は既にあるので、エイズウイルスを感染細胞内に閉じ込めて殺すというこの方法と組み合わせることで、リザーバー内に潜伏しているウイルスを駆除することが可能です。近い将来、エイズの完治につながることが期待されます。
 
 本研究成果は、科学研究費助成事業の支援を受け、学術雑誌「Scientific Reports」に平成29年8月21日(日本時間18:00)に掲載されました。
 
 
 
 【論文名】
 
 A clue to unprecedented strategy to HIV eradication: “Lock-in and apoptosis”
 
 【著者】
 
 Hiroshi Tateishi
 
  1
 
 , Kazuaki Monde
 
  2
 
 , Kensaku Anraku
 
  3
 
 , Ryoko Koga
 
  1
 
 , Yuya Hayashi
 
  4
 
 , Halil Ibrahim Ciftci
 
  1
 
 , Hasan DeMirci
 
  5
 
 , Taishi Higashi
 
  4
 
 , Keiichi Motoyama
 
  4
 
 , Hidetoshi Arima
 
  4
 
 , Masami Otsuka1* & Mikako Fujita
 
  6
 
 *(*責任著者)
 
 
 【所属】
 
 
  1
 
 熊本大学大学院生命科学研究部 生体機能分子合成学分野、
 
  2
 
 熊本大学大学院生命科学研究部 微生物学分野、
 
  3
 
 熊本保健科学大学保健科学部 医学検査学科、
 
  4
 
 熊本大学大学院生命科学研究部 製剤設計学分野、
 
  5
 
 スタンフォードSLAC国立加速器研究所、
 
  6
 
 熊本大学薬学部附属創薬研究センター
 
 
 【掲載雑誌】
 
 Scientific Reports
 
 
 【DOI】
 
 DOI:10.1038/s41598-017-09129-w
 
 URL:
 
  http://www.nature.com/articles/s41598-017-09129-w
 
 
 
 【詳細】
 
 
  プレスリリース本文
 
 (PDF198KB)
熊本大学大学院生命科学研究部
担当: 大塚 雅巳
電話: 096-371-4620
e-mail: motsuka※kumamoto-u.ac.jp(※を@に置き換えてください)
熊本大学薬学部附属創薬研究センター
担当:藤田 美歌子
電話:096-371-4622
e-mail: mfujita※kumamoto-u.ac.jp(※を@に置き換えてください)