新しい抗血栓療法時代の評価法~複数の抗血栓薬の効果判定を一つの機器で~

新しい抗血栓療法時代の評価法
~複数の抗血栓薬の効果判定を一つの機器で~

熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学(小川久雄客員教授?国立循環器病研究センター副院長)の海北幸一講師、有馬勇一郎医師、伊藤美和医師、末田大輔特任助教らは、虚血性心疾患、心房細動などの不整脈や、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)等で抗血栓薬※ 1 を服用中の患者において、国産の新しい測定装置※ 2 (Total thrombus-formation analysis system: T-TAS、藤森工業)を用いて血栓形成能(血栓のできやすさ)を測定することが薬効の評価や出血リスクの予測に有効であることを明らかにしました。
抗血栓薬は血液をサラサラにする薬として、心臓病や脳卒中の予防?治療に広く用いられていますが、これまではこれら多くの抗血栓薬の効果はそれぞれ異なる手法によって評価されており、一度に複数の治療薬を併用している場合などには、患者の状態に応じた一様な評価が難しい状態でした。中でも新規経口抗凝固薬※ 3 に関しては適切な効果判定法もなく、薬が安全で有効かどうかを確実に判断できませんでした。
本成果は、T-TASという新しい測定器を用いることで、これまで抗凝固効果の判定が困難であった新規経口抗凝固薬の効果や、虚血性心疾患患者が飲んでいる複数の抗血小板薬の効果を一つの検査機器で評価できることを明らかにしたものです。さらにT-TASの測定結果は出血性合併症の指標にもなりうることが示され、一連の報告は抗血栓薬の種類、投与量の調節や、出血?血栓性疾患の新たな管理指標として用いられることが期待されます。
本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて、一部の結果はすでに昨年、医学雑誌「 International Journal of Cardiology 」に、最新の結果については「 Journal of Thrombosis and Haemostasis 」オンライン版に米国(EST)時間の2016年1月16日(土)06:46【日本時間の1月16日(土)20:46】に掲載、さらに「 Journal of the American Heart Association 」オンライン版に米国(EST)時間2016年1月25日(月)10:00【日本時間の1月26日(火)0:00】に掲載されました。

※1 抗血栓薬
血栓と呼ばれる血液の固まりがひきおこす心筋梗塞や脳梗塞などの治療?予防に用いられる薬で、血液が容易に固まることを防ぎ、血栓形成を抑制します。血栓は血小板と凝固因子の相互反応により形成されますが、抗血栓薬は効果を発揮する部位に応じて、抗血小板薬と抗凝固薬に大別されます。血栓ができにくくなる(血液が固まりにくくなる)一方で、出血しやすい、出血が止まりにくいなどの副作用があります。

※2 血栓形成能解析システム(Total thrombus-formation analysis system: T-TAS)
血管を模したマイクロチップと検体(採血した血液)を送り出すポンプ、圧力センサー、光学顕微鏡で構成されるモニタリング装置。採血した血液は測定までに煩雑な前処理が不要で、しかも必要な試料は500μLと少量で済む点が特長です。チップ上に流れる血液が模擬血管に血栓を形成していく様子を実際に見ることができ、血栓ができる速さや量を定量的に評価することが可能です。得られる結果は、凝固因子の活性反応を中心に測定するAR値と、血小板の活性化を中心とした血栓形成を測定するPL値の二つがあります。

※3 新規経口抗凝固薬
この数年で日本市場に広まった新しいタイプの抗凝固薬で、旧来の抗凝固薬(ワルファリン製剤)と比較してより選択的に凝固因子を抑制することができます。そのため、十分な効果を保ちながら副作用(出血)を減らすことが期待され、急速に普及している薬剤です。しかし、効果を測定することが旧来の方法では困難などの問題もあります。

【掲載雑誌1】
International journal of cardiology (Int J Cardiol. 197:98-100, 2015)
【論文名】
A novel quantitative assessment of whole blood thrombogenicity in patients treated with a non-vitamin K oral anticoagulant.
【著者名】(*筆頭著者、??責任著者)
Sueta D, *Kaikita K, Okamoto N, Arima Y, Ishii M, Ito M, Oimatsu Y, Iwashita S, Takahashi A, Nakamura E, Hokimoto S, Mizuta H, Ogawa H.

【掲載雑誌2】
Journal of the American Heart Association (J Am Heart Assoc. 2016 in press)
【論文名】
Total Thrombus-formation Analysis System (T-TAS) predicts periprocedural bleeding events in patients undergoing catheter ablation for atrial fibrillation
【著者名】(?責任著者)
Ito M, *Kaikita K, Sueta D, Ishii M, Oimatsu Y, Arima Y, Iwashita S, Takahashi A, Hoshiyama T, Kanazawa H, Sakamoto K, Yamamoto E, Tsujita K, Yamamuro M, Kojima S, Hokimoto S, Yamabe H, Ogawa H.

【掲載雑誌3】
Journal of Thrombosis and Haemostasis (J Thromb Haemost. 2016 in press)
【論文名】
Assessment of platelet-derived thrombogenicity by the total thrombus-formation analysis system in coronary artery disease patients on antiplatelet therapy
【著者名】(?責任著者)
Arima Y, *Kaikita K, Ishii M, Ito M, Sueta D, Oimatsu Y, Sakamoto K, Tsujita K, Kojima S, Nakagawa K, Hokimoto S, Ogawa H.

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 429KB)

お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部
循環器内科学
担当:講師 海北 幸一(かいきた こういち)
電話:096-373-5175
E-mail:kaikitak※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)