小児慢性疲労症候群は報酬の感受性低下を伴う-学習意欲の低下を招く脳領域の活性低下-

理化学研究所(理研)ライフサイエンス技術基盤研究センター健康病態科学研究チームの渡辺恭良チームリーダー(大阪市立大学大学院医学研究科 名誉教授)、水野敬上級研究員(大阪市立大学大学院医学研究科 特任講師)と、熊本大学医学部附属病院の上土井貴子助教らの共同研究グループは、小児慢性疲労症候群(CCFS) [1] の患児の脳では、低い報酬しか獲得できなかった場合に、線条体 [2] の被殻と呼ばれる領域の神経活動が低下していることを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI) [3] を使って明らかにしました。

本研究成果はオランダのオンライン科学雑誌『Neuroimage: Clinical』(9月28日付け)に掲載されました。

【補足説明】
[1] 小児慢性疲労症候群(CCFS)
有病率は0.2~2.3%といわれ、不登校の児童?生徒に多く存在し、3ヶ月以上の持続する疲労?倦怠感および睡眠?覚醒リズム障害などの症状を特徴とする。CCFSはChildhood Chronic Fatigue Syndromeの略。

[2] 線条体
大脳基底核の主要構成要素の一つで、被殻と尾状核から成る。神経回路における大脳皮質からの入力を担い、運動機能、学習や記憶などさまざまな機能に関与する。

[3] 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
MRI(磁気共鳴画像法)の一種で、脳内の酸素濃度に依存して変化する信号(BOLD信号)を捉え画像化することで、脳血流や脳神経活動の変化を同定する手法。1990年代初頭に日本の小川誠二博士がBOLD信号変化の現象を発見して以来、非侵襲的にヒトの脳機能を解明するツールとして利用が拡大した。fMRIはfunctional magnetic resonance imagingの略。

【論文名】
Low putamen activity associated with poor reward sensitivity in childhood chronic fatigue syndrome.

【著者名】
Kei Mizuno, Junko Kawatani, Kanako Tajima, Akihiro T. Sasaki, Tetsuya Yoneda, Masanori Komi, Toshinori Hirai, Akemi Tomoda, Takako Joudoi and Yasuyoshi Watanabe

【掲載誌】
Neuroimage: Clinical
<DOI>10.1016/j.nicl.2016.09.016
<URL> http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213158216301747

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 675KB)

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