がん細胞を検知して発光シグナルを増大させるDNA複合体の連鎖反応をデザイン

【概要説明】 

 熊本大学大学院先端科学研究部の北村裕介助教、井原敏博教授らの研究グループは、同研究部の中島雄太准教授、同大学院生命科学研究部の馬場秀夫教授、岩槻政晃診療講師、株式会社オジックテクノロジーズ(本社:熊本県)、株式会社若林精機工業(本社:大阪府)との共同研究により、微量でもがん細胞を検知すると発光強度を増大する核酸分子デバイスを開発しました。

 本研究成果は、令和396日からオンラインで開催される高分子学会第70回高分子討論会で発表されます。また本研究成果が同学会パブリシティ賞を受賞しました。

 高分子学会は、高分子に関する科学及び技術の基礎的研究や応用、発展などを目的に1951年に創設された学術団体です。本賞は、本学会内での発表内容が学術、技術、又は産業の発展に寄与するものであり、対外的に発表するにふさわしいと認められたものに授与されます。

?○受賞内容
 ?発表日:令和3818
 ?発表番号:2S07
 ?講演題目:わずか1mLの血液からがんを診断?がん細胞を検知すると発光強度を増大する核酸マシン
 ?発表者:熊本大学大学院先端科学研究部 北村裕介 井原敏博
 (参考:高分子学会プレスリリース)https://main.spsj.or.jp/koho/koho_top.php

【研究内容】

 がんの転移は、原発腫瘍細胞組織から一部の腫瘍細胞が剥離し、血液やリンパ液の流れに乗り、体内の別の臓器に移動することで起こります。このように血流に乗って体内を循環している腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)と呼ばれています。CTCは画像診断では確認されない微細ながんや、通常の腫瘍マーカーでは捉えるのが難しいとされる初期フェーズのがん患者においても確認されており、有用な診断マーカーとして着目されています。しかしながら、血液1mL中に約50億個の血球細胞が存在するのに対し、CTCはわずか数個?数十個しか存在しないため、その検出は困難です。

 本研究では、腫瘍細胞に応答して開始されるDNA複合体の連鎖反応によって、溶液全体が発光する仕組みを構築しました。多くの固形腫瘍は細胞膜上にEpCAMという膜タンパクを高発現しており、これを腫瘍細胞の目印としました。また、EpCAMを認識し、結合する素子として抗EpCAM DNAアプタマー*を利用し、その末端に「タグ」となる任意のDNA配列を連結することで腫瘍細胞上にEpCAMを介して特異的に「タグ」を導入しました。同「タグ」はトリガー、マスクと名付けられた二つの一本鎖DNAが形成する二本鎖DNAと選択的に反応し、トリガーが遊離するように設計されています。この遊離状態のトリガーは、発光シグナルを増幅する核酸複合体の連鎖反応(DNAサーキット)を開始することが可能です。そのため、この機構を用い、胃食道部がん患者や胃がん患者の血液1mL中に含まれるわずかなCTCを目視可能な程強い発光にて検出することに成功しました。今後、他のがん種の患者も含めて、検証を続けて行くことで、将来的には簡便ながんの病態モニターや簡易診断への展望が期待されます。

?*DNAアプタマー:特定の塩基配列を有するDNAは特定の高次構造を形成し、抗体のように標的と選択的かつ強固に結合することができる。このようなDNADNAアプタマーと呼ぶ。DNAアプタマーは、化学合成できることから、安価に入手可能であり、免疫原性もないため、抗体に変わる次世代の分子認識素子として注目を集めている。

【詳細】

?プレスリリース本文(157KB)

お問い合わせ

熊本大学大学院先端科学研究部
担当:助教 北村裕介
電話:096-342-3872
e-mail:ykita※kumamoto-u.ac.jp
(迷惑メール対策のため@を※に置き換えております)