震災避難者数の推移予測モデルの提案ーインフラ被害や家屋被害に基づくモデリングー
【概要説明】
熊本大学大学院先端科学研究部の岡島寛准教授らは、震災避難者数の推移モデルに関する基礎研究成果を発表しました。
東日本大震災から10年、熊本地震から5年が経とうとしています。地震大国である日本では、地震発生に対する対策だけでなく、震災発生直後の支援活動が重要になってきます。特に重要な課題の一つに避難所を中心とした被災者への支援が挙げられます。震災時には、特定の地域における物流やインフラ環境が激的に変化することから通常の動き(ダイナミクス)とは大幅に異なったものとなり、支援の種類や規模の適切な決定が困難です。例えば物資の支援量が不足すると支援活動が停滞し、反対に多すぎても仕分けやスペース等様々な問題が生じるため、支援規模の適切な決定が重要になってきます。
これに対して地震発生時即座にわかる情報(家屋倒壊数や、電力などのインフラ状況など)を用いて発災以降1カ月程度の避難者推移を正確に見積もることができれば、発生後の避難計画や支援計画に役立ちます。
本研究では、被災者のうち特に支援が必要になる避難者数の経時的な人数推移を予測するための動的モデルを提案しました。具体的には、様々な地域での地震や様々な状況に対応する目的で、「家屋倒壊」、「インフラの損壊」、「物資需要」、「心的不安」の4要素に分類し、その分類ごとにモデルを細分化して求めています。さらに、避難所内のアンケートで特定可能な避難所避難者と、特定が困難な(車中泊などの)避難所外避難者とを独立したパラメータとして表現し、それらの推移をそれぞれ予測する点にも特徴があります。近年は、AI(人工知能)やビッグデータが様々な分野で活用されていますが、これらは過去に起きた事象の予測(内挿)は得意とするものの、起こっていない事象の予測(外挿)は得意ではありません。本研究は、AIやビッグデータでは読み解けないものが、数理モデル(ダイナミカルモデル)を使えば読み解けるという例の一つになります。
本研究ではさらに、計算機シミュレーションによる検証を行っております。提案したモデルを用いることで震災直後にわかる情報から避難者数推移の推定を行い、熊本地震での実際の避難者数推移の情報と比較することで、モデルとしてうまく機能することを確認しています。
本研究成果は、「システム制御情報学会論文誌」に2021年2月15日(月)に掲載されました。
【論文情報】
?論文名:潜在避難者を考慮した大規模災害における避難所避難者数推移の動的モデル
?著者名:岡島寛、甲斐しずく、徳永慎也
?雑誌名:システム制御情報学会論文誌2021年2月号
【詳細】
?プレスリリース本文(149KB)
お問い合わせ熊本大学大学院先端科学研究部
担当:准教授 岡島 寛
電話:096-342-3603
e-mail: okajima※cs.kumamoto-u.ac.jp
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