世界初!鉄隕石中に含まれる微小な結晶相「テーナイト」の強さと延性の計測に成功

【ポイント】

  • 鉄隕石(※1)を構成している微小な結晶相(※2)ごとの強さと延性を、独自に開発したマイクロ引張試験(※3)技術を用いて計測することに成功しました。
  • 窒素を多量に含む「テーナイト(※4)」と呼ばれる相が強さと延性を兼ね備えていることを発見しました。
  • 鉄隕石の起源や歴史の解明だけではなく、高張力鋼の設計戦略の考案に役立てられることが期待されます。

【概要説明】 

 熊本大学大学院先端科学研究部の峯洋二教授、高島和希教授の研究グループは、独自に開発したマイクロ引張試験技術を用いて、鉄隕石を構成している髪の毛の太さよりも小さいサイズの結晶相ごとの力学特性(引っ張ったときの強さと延性)を精密に計測することに世界で初めて成功しました。その結果、窒素を多量に含む「テーナイト」と呼ばれる相が強さと延性を兼ね備えていることを発見しました。鉄隕石は、その起源と歴史を理解するために調べられてきましたが、これまでの材料試験技術では、含まれるき裂の存在のために鉄隕石の物質そのものの強さと延性を正確に計測できていませんでした。この成果は、鉄隕石の起源や歴史の解明だけではなく、「先進高張力鋼」の設計戦略の考案に役立てられることが期待されます。人類が初めて手にした金属と言われる鉄隕石が現代のものづくりにもヒントを与え続けているのかもしれません。

本研究の成果は、2021年2月26日(金)午前10時(グリニッジ標準時)に、ネイチャー?リサーチ社刊行のオンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

【成果と展開】

 キャニオンディアブロ鉄隕石を構成する結晶相ごとに、マイクロ引張試験技術を用いて強さと延性を計測することに成功しました。また、微小な構成相「テーナイト」は、ニッケルに富むオーステナイト相であっても、高レベルの窒素が含まれており、優れた力学特性(降伏強さと破断伸び)を示すことが明らかになりました。

 現代の先進高張力鋼の開発では、厳しい環境条件下での使用において、鋼材中に吸収された水素によって鋼材の強度が低下する「水素脆化」のリスクを許容できるオーステナイト高張力鋼の開発が大きな課題となっています。本研究での発見が、高度な高張力鋼の開発に役立ち、鋼中の窒素とニッケルの含有量の関係を理解するための研究の動機付けになることを期待しています。

【用語解説】

※1 鉄隕石:主に5から60質量%までのさまざまなニッケル含有量をもつ鉄–ニッケル合金。ニッケル含有量に基づいて異なる組織学的特徴を示すいくつかのタイプに分類されます。また、発見された場所によって呼称されます。

※2 相:物理的な状態や化学的組成が一様な形態のもの。例えば、気相、液相、固相などがあります。固相は、結晶構造や化学的組成に基づいてさらにα相、γ相などに区別されます。

※3 マイクロ引張試験:MEMS(メムス)と呼ばれる、非常に微小な世界で活躍する電子機械デバイスを構成する材料の力学特性計測のために開発された試験方法。従来のサイズでの引張試験に用いられる試験片の千分の一程度のスケールで計測することが可能です。

※4 テーナイト:鉄隕石を構成する鉄–ニッケル合金で、ニッケル含有量が約30から60質量%の面心立方晶の結晶構造をもつ金属相。人工的に作られるオーステナイトに相当します。

【論文情報】
?論文名:Excellent mechanical properties of taenite in meteoric iron
?著者名:Shohei Ueki, Yoji Mine, Kazuki Takashima
?雑誌名:Scientific Reports
?doi:10.1038/s41598-021-83792-y
?URL:www.nature.com/articles/s41598-021-83792-y

【詳細】

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