ラット凍結精子の受精能を高める技術を開発

【ポイント】

  • 医学や創薬研究に必要な遺伝子改変ラットの作製、保存、輸送効率を改善する精子凍結保存技術と体外受精技術を開発しました。
  • ラット精子は、物理的障害を受けやすく凍結保存が困難でしたが、凍結条件や操作の最適化により、高い運動性を有したまま保存が可能になりました。
  • 体外受精における高濃度アルブミンの使用や卵丘細胞の除去が、ラット凍結精子の受精能を高めることを明らかにしました。
    【概要説明】

 熊本大学生命資源研究?支援センター資源開発分野の竹尾透教授、中尾聡宏研究員、土山修治技術職員、同センター生殖工学共同研究分野の中潟直己特任教授、三小田伸之研究員、大学院医学教育部の山鹿優真大学院生、前田龍成大学院生らの研究グループは、医学研究や医薬品の研究開発に有用な遺伝子改変ラットの作製、保存、輸送効率を高める基盤技術として、精子凍結保存技術および体外受精技術を開発しました。

 本研究成果は、2022年10月10日に英国科学雑誌「Lab Animal」で公開されました。

?【展開】

 本研究は、医学研究や医薬品の研究開発に有用な遺伝子改変マウスの作製、保存、輸送に有用な基盤技術として、世界中の大学や研究機関に利用されることが期待されます。

 また、熊本大学生命資源研究?支援センターでは、1998年より遺伝子改変マウスの作製、保存、供給を行うマウスバンクを運営していますが、本研究成果を活用したラットバンクも始めており、新たな研究資源である遺伝子改変ラットを活用して脳科学、創薬、再生医療研究にも貢献していきます。

 さらに、本論文では、科学技術を分かりやすく紹介したいという希望もあり、本論文に関するアニメーションも制作しました。本アニメーションを通じて、研究者だけではなく、学生たちや一般の方に向けて、分かりやすく科学技術を伝える活動にも取り組んでいきます。

○アニメーション 閲覧URL

https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41684-022-01053-5/MediaObjects/41684_2022_1053_MOESM3_ESM.mp4

 今後の展望として、ラットの生殖工学技術はマウスに比べてまだまだ遅れており、今後は卵子側からのアプローチ、すなわち排卵数を増加させる技術などの開発を進めることで、より効率的なラットバンクの確立を目指します。


【論文情報】

  • 論文名:Optimized protocols for sperm cryopreservation and in vitro fertilization in the rat
  • 著者:Toru Takeo, Satohiro Nakao, Nobuyuki Mikoda, Katsuma Yamaga, Ryusei Maeda, Shuuji Tsuchiyama, Ena Nakatsukasa, Naomi Nakagata
  • 掲載誌:Lab Animal
  • DOI:10.1038/s41684-022-01053-5
  • URL:https://www.nature.com/articles/s41684-022-01053-5

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【詳細】 プレスリリース(PDF343KB)

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