表皮幹細胞を老化から守る仕組みの解明 ~皮膚の抗老化因子として細胞外マトリクスに期待~

【ポイント】

  • 加齢に伴い、表皮幹細胞の性質が損なわれ、分裂の早い表皮幹細胞が徐々に減少していくことを発見しました。
  • 細胞外マトリクスであるfibulin-7は、表皮幹細胞を長期的に維持し、皮膚再生能力を制御するために必要なタンパク質であることを明らかにしました。
  • 表皮幹細胞の微小環境は、老化に関連した炎症への反応や創傷治癒の障害から幹細胞を保護する役目を果たすことが分かりました。
    【概要説明】

 熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)の佐田亜衣子特任准教授、筑波大学生存ダイナミクス研究センターの柳沢裕美教授らの研究グループは、細胞外マトリクスfibulin-7が、表皮幹細胞周囲の微小環境を構築することで、皮膚の老化を防ぐ鍵になる因子の一つであることを解明しました。本研究成果は、老化した表皮幹細胞や環境因子を標的とした皮膚の老化予防?制御法の創出へとつながることが期待されます。

 皮膚は、外的?内的ストレスを常に受けながらも、柔軟に応答し、組織を回復する力を持つレジリエンスの高い臓器の一つですが、加齢とともに徐々にその能力を喪失していきます。佐田らは、先行研究において、表皮幹細胞には、分裂の早い集団、遅い集団のそれぞれが存在することを発見し、表皮幹細胞に分裂不均一性があることを提唱してきました。本研究では、2つの表皮幹細胞の集団バランスを担う環境因子として細胞外マトリクスであるfibulin-7が重要であることを見出しました。

 本研究の成果は、EMBO Reports誌に2022年10月24日19時(日本時間)にオンライン公開されました。

?※本研究は、日本医療研究開発機構の革新的先端研究開発支援事業(AMED-PRIME:JP21gm6110016)、文部科学省科学研究費助成事業(20H03266、20K22659、17H05631、16H06660)等の支援を受けて実施しました。

 

【展開】

 本研究は、表皮幹細胞の分裂頻度と老化との関係を明らかにし、その制御因子として皮膚の抗老化に作用する細胞外マトリクスfibulin-7やその結合タンパク質を同定しました。Fibulin-7を介した表皮幹細胞の微小環境の制御は、皮膚の慢性炎症や創傷治癒不全、加齢性皮膚疾患の治療標的として有用な候補となる可能性があります。


【論文情報】

  • 論文名雑誌名:The extracellular matrix fibulin 7 maintains epidermal stem cell heterogeneity during skin aging

    ?(和文タイトル:細胞外マトリクスfibulin-7は、皮膚老化における表皮幹細胞の不均一性維持にはたらく)

  • 著者:Erna Raja, Gopakumar Changarathil, Lalhaba Oinam, Jun Tsunezumi, Yen Xuan Ngo, Ryutaro Ishii, Takako Sasaki, Kyoko Imanaka-Yoshida, Hiromi Yanagisawa, Aiko Sada
  • 掲載誌:EMBO Reports

【詳細】 プレスリリース(PDF468KB)

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お問い合わせ

熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)
担当:特任准教授 佐田 亜衣子(さだ あいこ)
電話:096-373-6890
E-mail:aisada※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)