植物が持つ力を明らかにして日々の暮らしに役立てたい
薬用植物がもつチカラを科学的に解き明かす
健児くん(以下◆):先生方の研究について教えて下さい。
デブコタ先生:私が熊大に来たのは2007年10月、その後2008年4月に大学院に入学しました。それまではネパールの薬学部にいたのですが、植物の研究をしたい、と思っているとき、熊本大学の先生がネパールに調査に来て、熊大に行きたいと思ったんです。ネパールは高山植物が有名な国です。さまざまな植物を活用して、アーユルヴェーダなどの伝統医療が行われています。国民の6割は薬用植物を使った治療を受けているとも言われているほど、薬用植物は身近な存在。使う部分が国によって違うのも面白いですよね。そんな薬用植物が持っている機能や効能について、研究したいと思っているんです。薬用植物の使い方は、国によっても違います。例えば、日本では野菜として知られるアスパラガスですが、ネパールでは根っこの方を薬用植物として使うほうが有名です。熊大には、いろいろな国の留学生もいるので、それぞれの国の学生と一緒に研究しているところです。
渡邊先生:私はもともと農学部で植物の研究をしていました。そのとき、地球上には何万もの植物があるが、利用されているのはほんの一部で、研究されていないものがほとんど、という話をききました。その中には薬用に使われるものも多いと聞いて、薬用植物って面白そうだと思ったのが研究を始めたきっかけです。熊大に来て10年になりますが、修士課程の2年目から、薬草園の管理の仕事に携わることになりました。今は、シダ植物の機能性についての研究をすすめています。
デブコタ先生:私が熊大に来たのは2007年10月、その後2008年4月に大学院に入学しました。それまではネパールの薬学部にいたのですが、植物の研究をしたい、と思っているとき、熊本大学の先生がネパールに調査に来て、熊大に行きたいと思ったんです。ネパールは高山植物が有名な国です。さまざまな植物を活用して、アーユルヴェーダなどの伝統医療が行われています。国民の6割は薬用植物を使った治療を受けているとも言われているほど、薬用植物は身近な存在。使う部分が国によって違うのも面白いですよね。そんな薬用植物が持っている機能や効能について、研究したいと思っているんです。薬用植物の使い方は、国によっても違います。例えば、日本では野菜として知られるアスパラガスですが、ネパールでは根っこの方を薬用植物として使うほうが有名です。熊大には、いろいろな国の留学生もいるので、それぞれの国の学生と一緒に研究しているところです。
渡邊先生:私はもともと農学部で植物の研究をしていました。そのとき、地球上には何万もの植物があるが、利用されているのはほんの一部で、研究されていないものがほとんど、という話をききました。その中には薬用に使われるものも多いと聞いて、薬用植物って面白そうだと思ったのが研究を始めたきっかけです。熊大に来て10年になりますが、修士課程の2年目から、薬草園の管理の仕事に携わることになりました。今は、シダ植物の機能性についての研究をすすめています。
地域の活性化にもつながる薬用植物の成分研究
◆:薬用植物の研究成果はどのように活用されているんですか?
渡邊先生:食べられている野草や山菜などは、研究がされていないものがほとんどです。もし、機能性のある成分が見つかれば、マイナーだった植物も、世に出てくるかもしれません。野草や山菜が豊富な地域は中山間地が多く、機能性が見込める成分が見つかれば、地方の活性化にもつながるかもしれないと思っています。
デブコタ先生:たとえば、ウンシュウミカンの花を混ぜたお茶を販売してる方からの依頼で、花に含まれる成分を分析し、機能性を解明したりしました。2015年より宮崎県日向市が薬学部と連携して行っている「薬草の里作り事業」があります。その一環として、インドやネパールで民間薬として古くから飲まれている「ホーリーバジル」に着目し、栽培から商品開発までを行い、ハーブティーを開発しました。伝統的医療では活用されてきた植物に、本当の薬効があるのかを調べれば、皆さんの健康にもつながりますよね。日本では漢方薬は保険医療に含まれて、西洋医療と共存しながら活用されていますが、ほかの国では、西洋医療だけが大事に見られているところも少なくありません。薬用植物などの伝統医療の薬効が、科学的にも証明され、薬に活用できるようになれば、人間への安全性は経験的に証明されているようなものなので、早く新薬につなげることもできるかもしれません。今後は、そんな新薬開発につながる研究もしていきたいですね。
渡邊先生:食べられている野草や山菜などは、研究がされていないものがほとんどです。もし、機能性のある成分が見つかれば、マイナーだった植物も、世に出てくるかもしれません。野草や山菜が豊富な地域は中山間地が多く、機能性が見込める成分が見つかれば、地方の活性化にもつながるかもしれないと思っています。
デブコタ先生:たとえば、ウンシュウミカンの花を混ぜたお茶を販売してる方からの依頼で、花に含まれる成分を分析し、機能性を解明したりしました。2015年より宮崎県日向市が薬学部と連携して行っている「薬草の里作り事業」があります。その一環として、インドやネパールで民間薬として古くから飲まれている「ホーリーバジル」に着目し、栽培から商品開発までを行い、ハーブティーを開発しました。伝統的医療では活用されてきた植物に、本当の薬効があるのかを調べれば、皆さんの健康にもつながりますよね。日本では漢方薬は保険医療に含まれて、西洋医療と共存しながら活用されていますが、ほかの国では、西洋医療だけが大事に見られているところも少なくありません。薬用植物などの伝統医療の薬効が、科学的にも証明され、薬に活用できるようになれば、人間への安全性は経験的に証明されているようなものなので、早く新薬につなげることもできるかもしれません。今後は、そんな新薬開発につながる研究もしていきたいですね。
さまざまな薬用植物を、多くの人に知ってもらう「薬草パーク観察会」
◆:薬草園では、どんなことをしていますか?渡邊先生:薬草園の管理や栽培している薬用植物の成分研究などを行っています。薬学部には薬草園の設置が義務付けられているので、薬草園自体はいろいろなところにあるのですが、熊大の薬草園ほど管理が行き届いている場所は少ないと思います。現在、1,500種類ほどの植物を栽培しており、一般的に薬用植物として知られているものだけでなく、アイラトビカズラなどの絶滅危惧種の保全も行っています。薬用植物の分野でも絶滅危惧種は多く、薬用として使えるのはわかっていても、量がとれず薬にできない、というものもあります。例えば、よく知られているセンブリ。生えている場所は限られてきました。熊本でも阿蘇くらいです。栽培方法などを研究して保全していかないと、絶えてしまうかもしれません。なので、時にはフィールドにでて、自生地が破壊されない程度に種を取り、薬草園で栽培方法を研究し、保全するのも仕事の一つです。似たような植物でも、栽培方法は異なることが多いので、栽培はなかなか難しいです。特に、熊本の夏は暑いので、涼しい場所に自生する植物の栽培には苦労します。枯れたりしないよう、冷房の入った部屋も作っているんですよ。
◆:薬草園は「薬草パーク構想」の一環として「植物観察会」も行っていますね
デブコタ先生:熊大の薬草園は、マチナカにあって、すぐに立ち寄れる交通アクセスもいいですよね。なので、みなさんにもっと気軽に来てもらって薬用植物について学んでもらおうと開催しているのが「薬草パーク観察会」なんです。年4回、その季節に薬草園で見られる植物について、私たちが解説しながら、園内を散策します。薬用植物についての講演もあり、楽しく学んでもらえます。これまで小学生のお子さんを連れた親子づれの方や、高校生、中学生、薬剤師の方など、幅広い人が来てくれました。毎回40人くらいが、グループに分かれて薬草園を回るのですが、園内は広いので「1時間30分の散策時間では足りない」という人も多いです。薬草園には身近な植物も多く栽培されていますが「食べたことはあるけれど、植物を見たのは初めて!」という声も効かれます。ゴボウの種が薬用に使われると知って驚いたり、ゴマの花がきれいなことにびっくりされたり。毎回、いろいろな驚きがあるようです。
次回は7月7日(土)に観察会が開催されます。ぜひ、皆さんもおいでください!
- 第9回観察会についてはこちら
外国人と交流しながら、積極的に学ぼう
◆:学生のみなさんへメッセージをお願いします!
デブコタ先生:薬用植物の研究には難しいところも多いです。伝統的医療での使い方と実際の機能性を比較するのですが、人が飲んだら効くけど、実験ではどのように効いているかわからない、ということもあります。どこでどのように効いているのか、メカニズムを解き明かすのは本当に難しいんです。でも、さまざまな国の人と一緒になって研究すれば、技術を発展途上国に移転して、研究をすすめることもできます。そんなとき、重要なのは、いろいろな国の宗教や食べ物、考え方の違いを知っておくことです。これから、日本にも外国人が増えるでしょう。海外に行かなくても外国人との交流が増えてきます。学生時代から外国人の交流のやり方などに慣れていれば、困らないのはないでしょうか。ボーダーレス化する世界の中に、若いうちに飛び込んでもらえたらいいなと思います。
渡邊先生:どこでもそうだと思いますが、薬学部にもたくさんの専門家がいます。それぞれ、その世界での第一人者です。興味がある分野の先生や先輩を探して、どんどん活用してもらいたいですね。そうすることで興味が深まるし、一つ上の研究もできていくと思います。
デブコタ先生:薬用植物の研究には難しいところも多いです。伝統的医療での使い方と実際の機能性を比較するのですが、人が飲んだら効くけど、実験ではどのように効いているかわからない、ということもあります。どこでどのように効いているのか、メカニズムを解き明かすのは本当に難しいんです。でも、さまざまな国の人と一緒になって研究すれば、技術を発展途上国に移転して、研究をすすめることもできます。そんなとき、重要なのは、いろいろな国の宗教や食べ物、考え方の違いを知っておくことです。これから、日本にも外国人が増えるでしょう。海外に行かなくても外国人との交流が増えてきます。学生時代から外国人の交流のやり方などに慣れていれば、困らないのはないでしょうか。ボーダーレス化する世界の中に、若いうちに飛び込んでもらえたらいいなと思います。
渡邊先生:どこでもそうだと思いますが、薬学部にもたくさんの専門家がいます。それぞれ、その世界での第一人者です。興味がある分野の先生や先輩を探して、どんどん活用してもらいたいですね。そうすることで興味が深まるし、一つ上の研究もできていくと思います。
(2018年6月18日掲載)