英語英米文学研究室(文学部文学科欧米言語文学コース)
Lab’s data【英語英米文学研究室データ】
永尾 悟 准教授 |
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永尾准教授が研究対象とする ウィリアム?フォークナーが住んでいた家 (アメリカ ミシシッピ州オックスフォード) |
ボロボロになるまで読み共感できた時、
文学は、自分の生きる力になる
~「闘いの文学」とも言える20世紀のアメリカ南部文学~
文学部文学科欧米言語文学コース英語英米文学研究室には4人の先生が在籍。英語学、英米の小説や詩などをテーマに研究を行っています。
今回は、永尾悟准教授にお話を伺いました。
永尾准教授のテーマは、20世紀のアメリカ南部文学とホワイトネス(白人であること)。ウイリアム?フォークナーの作品を中心に研究しています。「アメリカ南部は奴隷として連れてこられた黒人が多く、彼らを労働力としてコントロールしていたのが白人です。南北戦争後、奴隷が解放されると白人の立場も変化。20世紀前半のアメリカ文学にはその状況が詳しく書かれています」。白人作家が、黒人と黒人を見る自らの存在をどのように考えているか、そして南部にルーツを持つ黒人作家が、白人との関係を通して自らのアイデンティティをどう見ているかを、作品から読み解きます。人種問題が今も続く理由を探るヒントとして、古い文学における人種問題を見ていく必要があると永尾准教授。「アメリカの特に有色人種は、社会的権利や労働環境が奪われる中、書くことで自分たちの存在意義を表明する必要があった。生きることと常に結びついているのがアメリカ文学です」。読む人も、闘いの文学とも言える作品を自らの生きる力に変えようとする、そんな「生活感」があるところが好きだと、その魅力を話してくれました。
~作品への理解には、検証素材や人との対話も不可欠~
授業では日本語は使わず、英語を英語で解釈するのが基本。教員と学生のやり取りもほぼ英語です。
高校卒業の英語力で原書を読む力は備わっており、教員はそれを手助けするだけだと永尾准教授。
もちろん、きちんと理解することは必要で、そのためには論証も不可欠です。時代背景やその作家のインタビュー記事、手紙、伝記などの素材を集めて検証します。「読書とは一人静かに座って読むだけではなく、作品を理解するためにはほかの研究者や友人との対話、議論も必要。英文研の学生の結びつきは、本を介してつくられていくことに特徴があります」。
文学は決して自分の問いに答えてはくれません。それでも、登場人物の心情を想像しながら読み進めていく中で、登場人物がどう考えているかが分かったり、共感できることが文学の楽しさだと永尾准教授は話します。「書籍は神棚に上げておくものではなく、むしろ引っ張りおろしてボロボロになるまで読んでほしいもの。そして、日本語とは違う言語でものごとを考えることで、社会や日常に対する複眼的な視点を持ってほしいですね。豊かな表現力も身につきます。言葉は人間力であり、生きる支えになるはずです」。
Interview
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文学部文学科4年
木下 恭輔さん(左) |
文学部文学科3年
木村 優作さん(右) |
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英語は、話すことの上達に特化すれば手っ取り早いかもしれませんが、文学作品を読むことで、より自分のものにできると考えました。ただ読むだけではなく、その言葉を使った背景や何を伝えようとしているのか、作者の意図をつかめた時に喜びを感じます。自分の考えを、いろいろな角度から見る手助けをしてくださるのが永尾先生。経験に基づいたアドバイスは、先生というより先輩のような存在です。予習や課題も大変でしたが、逃げずに取り組めたことが今後の糧になると思います。 | 日本語以外の言語で本を読んでいると違う自分になっているような気がすることがあり、「こんな考え方をしている自分がいる」と気づいた時、楽しいと感じます。現在読んでいるのはトルーマン?カポーティの『遠い声遠い部屋』。とても難しいと言われましたが、一目ぼれのようにはまり、がんばって読んでいます。学生のうちはできることに限界がありますが、永尾先生は、私たちがやりたいことと、やれる一番高い部分をうまくすり合わせてやらせてくださるので、ありがたいです。 |
密着!英語英米文学研究室
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2015年5月新歓コンパ
学生が企画する研究室行事の一つ。英文研に来たばかりの学生もコンパ後には先輩や教員たちとすっかり打ち解けています。
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熊大英文学会
英文研の同窓会かつ研究団体。年に1回、様々な年代の卒業生から在学生、教員までが一堂に集まります。世代を超えて、交流をすることができる貴重な機会です。
(熊大通信63号(2017WINTER)1月発行)
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