思春期のみんなへ、大切なことを伝えたい![医学部保健学科公認サークルくまぴあ]
中高生を対象に、啓発活動
「ピア」とは英語で「Peer」と書き、仲間や同僚を意味します。さまざまな問題や悩みを抱える人同士が、お互いに話をしながら支え合う「ピア?サポート」は、依存症患者や難病患者の自助グループなどで使われる言葉。そのほか、自助グループでなくても、全国にあるさまざまな団体や組織が、「ピア」を冠にいろいろなボランティア活動や取り組みを行っています。今回ご紹介するのが、「ピア」活動を行う、医学部保健学科看護学専攻の学生が中心となった医学部保健学科公認サークル「くまぴあ」。3年生で、くまぴあ代表の小川和希さんと2年生の井上智晴さんにお話を伺いました。「私たちくまぴあは、性教育、コミュニケーション、ライフプランの3つを柱に、主に中高生に向けた自己啓発や性教育を行っています。昨年は、いくつかの高校の文化祭にお邪魔して、エイズに関するクイズやアンケートを実施したり、熊本市の中心街で街頭キャンペーンを行ったりしました。熊本県の保健所と協力することも多いです」と小川さん。そのほか、熊本大学内での発表報告や、熊本県性教育研究会の月例会に招かれての活動報告、JICA(国際協力機構)と協力した大学生の意識調査、他大学との勉強会などを含めると、1年間で10近いイベントや発表を行っています。「現在、部員は32名。みんな忙しいので、それぞれ、参加できる時に参加する、という形で活動しています。イベントや発表報告が決まると、約2カ月前から準備開始。ミーティングなどを重ねます。準備だけに参加できる人もいれば、当日のイベントの手伝いだけ、という学生も。ただ、自分たちの学びのためにも、来年度からは月1回定期的に集まる形にしたいと考えています」。
大学生だからこそできる役割がある
高校での性教育プログラムの一つに、紙コップを使った手法があります。人数分用意した紙コップの中にさまざまな色紙を刻んで入れておきますが、赤色が入っているのは一人だけ。次に、音楽をかけてそれぞれが教室内を移動し、音楽が止まったら、隣にいる人と紙コップの中身を少しずつ混ぜます。これを繰り返していると、最後にはいつの間にかほとんどの紙コップの中に赤色の紙が入っている状態に。「シェイクシェイク、という視覚的に性感染症の広がり方を見せる手法です。ほかにもいろいろなことを行い、参加してくれた高校生たちが、すごくわかりやすかったし、問題を身近に感じることができたと言ってくれたのがうれしかったです」と小川さん。阿蘇の高校生を対象に行った時は、まだ小川さん自身が活動の場数をあまり踏んでいない頃。大切なことをうまく伝えられるか不安だったそうですが、「中高生を対象にした活動に関して言えば、年齢が近い私たち大学生から話を聞くことで、大事なことかもと意識を向けてもらえたり、共感してもらえる」と、大学生ならではの役割を感じていると話します。井上さんは、「保健所とともに行った街頭キャンペーンのイベントでは、企画から参加し、会議にも出席。学生で、最初から最後まで経験できたことは、今までの活動で一番記憶に残っています」。取り組みからは課題も見えてくるそうで、「街を歩く人すべてに呼び掛ける場合、いかに関心を向けてもらえるか。みんなに情報を届けるためには、関心がない人に向けた取り組みが大事と学びました」。例えば、買い物を目的に歩いている人に関心を向けてもらうにはどうすればいいか考え、音楽の演奏を組み込み、音楽に足をとめてもらったところでトークショーを行う、などの案を練り、幅広く届ける工夫を取り入れました。「この経験は、社会人になった時も活かせると思っています」。
自分の生き方についても考えられる活動
くまぴあに入部した理由について、小川さんは、「大学生になって、ボランティア的な活動に参加したいと思っていたから」。同時に、ほかにも2つのサークルに入りましたが、今はくまぴあをメインにしているそう。「私自身も悩んだ思春期にいる中高生と触れ合うピアの活動に魅力を感じたからです。くまぴあは性とコミュニケーションとライフプランという3つが柱と言いましたが、性感染症予防なら、性教育だけでなく、コミュニケーションも大事だし、将来こういう生き方がしたいなら、今これはやっても、あれはしない、といったようなライフプランも大事。3つは密接にかかわっていて切り離せないことを学び、より活動に魅力を感じたことが、現在くまぴあメインで活動している理由です」。井上さんも、入部した理由は、小川さんと同じく「ボランティア的な活動を経験したかったこと」。さらに、「将来保健師になりたいと考えて保健学科に進学したんです。保健師の仕事には啓発活動もあるので、そんな経験が大学生のうちにできればと思いました」と話します。「くまぴあの活動は、大切なことを人に伝えるというだけでなく、自分の生き方についても考えることができるものです。来年度の新入生にもたくさん入部してもらって、みんなと一緒にやってきたいと思います」。
(2019年3月29日掲載)