令和6年度入学式式辞

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 桜の花舞う今日の良き日に、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。

 本日ここに、御来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長、教職員と共に、総勢2,570名の入学生の入学式を執り行うことができることは、大変喜ばしいことであります。また、入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてくださったご家族や先生方をはじめ関係する皆様に深く感謝しつつ、心よりお慶び申し上げます。

 皆さんがこれから学ぼうとする熊本大学は、1887年(明治20年)に設立された第五高等中学校(五高)から数えて137年の長い歴史と素晴らしい伝統を持ちます。文学部、法学部、理学部は旧制第五高等学校、教育学部は熊本師範学校、工学部は熊本工業専門学校、薬学部は熊本薬学専門学校、医学部は熊本医科大学を母体として、1949年(昭和24年)に国立熊本大学として発足した総合大学です。さらに歴史をさかのぼりますと医学部と薬学部は細川藩が1756年(宝暦6年)に開いた再春館と蕃滋園に始まります。

 熊本大学には「五高記念館」、「化学実験場」、「工学部研究資料館」、「表門(おもてもん)」(通称:赤門)の4つの国指定重要文化財の建造物があり、なかでも1889年(明治22年)に完成した五高記念館は重厚感漂う美しい建造物で、キャンパスは日本の大学の中でも特に歴史と伝統を感じさせる「本当に大学らしい大学」と評価されています。その第五高等学校では、夏目漱石、嘉納治五郎、ラフカデイオ?ハーンなどが教鞭をとり、物理学者で随筆家の寺田寅彦、首相となった池田勇人、佐藤栄作などが学生として学びました。また、本年から新千円札の肖像となります日本医学の父で感染症学の巨星、北里柴三郎博士は、1853年熊本県小国町に生誕し、熊本大学医学部の前身である古城医学校でオランダ人軍医マンスフェルトに師事し医学への道を志されました。一歩キャンパスや建物に踏み入ると、彼らの息吹を感じることができる空間が広がっています。皆さんは、この緑豊かな素晴らしい空間で、思う存分、学びを深めることができます。

 熊本大学では、文系?理系を問わず、数理?データサイエンス教育並びに高度な英語力と異文化理解を持った国際対話のリテラシーを身につけられる教育を提供し、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応し、SDGsの達成に貢献できるグローバル人材を育成していきます。また、今月から、学部相当の教育組織としては熊本大学創設以来初めて、75年ぶりとなる「情報融合学環」が始動しました。「情報融合学環」では、半導体分野の人材育成に留まらず、文理融合の学部横断的な教育を実現する学部等連係課程として、イノベーションを創出し国際社会で活躍できる人材を育成します。

 さて、海外に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻は、開始から2年が経った今も出口が見えず、イスラエルとパレスチナの紛争も収束の兆しが見えない等、国際情勢も目まぐるしく変化しています。グローバル化が進展する中で、異文化理解や国際協力の重要性が増しています。大学は高校までの教育と違い、教えられるのではなく自ら学ぶことが大切です。すなわち単に知識を得るだけでなく、目的意識を持って自ら学ぶ姿勢が重要です。皆さんには、グローバルな視点を持ち、実用的な英語力を身につけ、国境を越えて活躍できるリーダーを目指して欲しいと思います。

 大学は、知識を得る場所にとどまらず、人生の貴重な経験を積む場でもあります。共に学ぶ友人やサークル活動を通しての先輩、後輩達との出逢い、共通の目標に向かって力を合わせて成し遂げる過程の中で人間形成を育み、社会性を身に付けて欲しいと思います。私は1972年に、皆さんと同じように、この熊本大学に入学しました。大学時代の友人との出逢いやクラブ活動を通して人として成長できたと実感しています。その仲間とは、半世紀を超えた今でも交流があり、人生の様々な重要な局面において、頼もしくかけがえのない存在になっています。

 大学生活を充実させる上で皆さんに心がけていただきたいことは、「挨拶」をはじめとしたface to faceコミュニケーションです。特に挨拶は、お互いが心を開いて近づき、人間関係を築いていく第一歩になります。大学内で人に会ったら会釈でも良いですので、挨拶を心がけてください。デジタル化でオンラインコミュニケーションが普及してきた今だからこそ、face to faceが大切です。これは私の今までの経験から得た信念です。

 熊本県は半導体関連企業を中心とした産業集積が急速に進み、先端的な重要地域として、国内はもとより国際的にも非常に注目されています。百年に一度といっても過言ではない大変革期にあることは間違いありません。

 皆さんが大学生活を送るこの大変革期には、大胆な発想を呼び起こす叡智と自由な発想?創造とそれを具現化する情熱が必要です。まさに、熊本大学が掲げているコミュニケーションワード「創造する森 挑戦する炎」の実行の時です。大学は、皆さんの夢の実現のために研鑽する場ですが、同時に、社会の未来をより良くするために考え、行動する場でもあります。

 これから教職員が一丸となって皆さんの成長と活躍を応援しますので、私も育った伝統ある熊本大学で有意義な大学生活を送られることを期待しています。

 本日は、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。

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                                令和6年4月4日     

                                     熊本大学長 小川久雄

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