年頭所感

明けましておめでとうございます。
? 皆様におかれましては、健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

熊本地震のその後
 平成28年の熊本地震から、早3年を迎えようとしています。先週の1月3日には、熊本県北部で震度6弱の地震が発生しましたが、今のところ大きな被害の報告もなく、安堵しています。本学においては、熊本地震によって被害を受けた設備?備品の復旧はほぼ完了し、建て替えが行なわれている工学部1号館も、本年3月には竣工予定ですが、五高記念館などの重要文化財関連の建物の復旧は2021年度までかかる予定です。
 熊本地震直後から取り組んだ七つの「熊本復興支援プロジェクト」は、着実に成果を収めました。地震対策で密になった産学官の連携を基に「熊本創生推進機構」を改組し、地域産業振興、人材育成、雇用創出などを進めています。また、熊本の特徴を活かした地下水循環?沿岸環境?減災?地域づくりの研究を総合的かつ実践的に推進する「くまもと水循環?減災研究教育センター」を設置し、更に昨年は「地域医療支援プロジェクト」の流れで、文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム(医療チームによる災害支援)に採択されたことを機に、「熊本大学医学部附属病院災害医療教育研究センター」を設置しました。

2018年を振り返って
 一言で言うと、大学にとっては「激変の始まりの一年」でした。人事制度、大学評価や大学間連携の在り方など、大学は厳しい批判を受け、更なる改革が求められ続けています。昨年暮れには、各大学を評価するための客観的指標の設定などが公表され、来年度は基盤経費の約10%が評価に基づき配分されることになります。ただ、その詳細はまだ分かっていないため、2019年度の学内予算配分など、その決定が遅れる可能性があります。
 このような状況の中、教育組織の見直しを進め、4月には工学部を改組するとともに自然科学教育部を設置しました。また、本年4月には社会文化科学研究科を社会文化科学教育部に名称変更する予定で、これにより基本的には教員は生命科学研究部、先端科学研究部及び人文社会科学研究部の三つの研究部に属することになり、人文社会科学系、自然科学系及び生命科学系の三つの系において、教育組織と教員組織の分離が完成することになります。
 更に、「熊本創生推進機構」を地方創生を強力に推進する中核的組織として三部門に再編強化し、「グローバル教育カレッジ」や「大学教育統括管理運営機構」の組織強化も行いました。これらにより、今後、更なる熊本の産業復興、企業との共同研究の推進をするとともに、大学教育の活性化とグローバル化を図っていきたいと思います。

2019年に向けて
 昨年11月には、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が、2040年の社会を見据えた高等教育の在り方について柴山文部科学大臣に答申しました。具体的には、少子化を踏まえての定員見直し、一法人複数大学などの大学間連携や統合を促す制度の導入が挙げられました。また、この答申では、大学の教育を適正に行うことが重要であるとも謳われています。

1)教育について
 「大学教育統括管理運営機構」を中心として、高大接続モデルや入試改革、大学院共通教育を充実させていきます。そのためには、卓越大学院は是非とも実現させたいと思います。また、具体の教育改革では、人材育成の場である大学はどういった人材を育て、どのような教育で知識を習得させるのかを明確にし、本学を目指す受験生たちに大学及び各学部の方針を分かりやすく提示していくことが重要と考えます。そして、設定した目標や学修成果をフィードバックし、更には就職状況や就職率なども明らかにすることにより、大学の価値を高める必要があります。

2)研究について
 研究においても、第3期の「中期目標?中期計画」に掲げている事項を着実に進めることが私の責務です。国際先端医学研究機構や国際先端科学技術研究機構を発展させ、人文社会科学系にも類似の研究機構を設置することを目指します。「熊本大学といえばこの研究」と言われる発生医学、エイズ学、パルスパワー、先進マグネシウム合金等の研究の発展にも努めます。エイズ研究では、本学エイズ学研究センターと鹿児島大学の難治ウイルス病態制御研究センターを統合再編し、「ヒトレトロウイルス学共同研究センター」を設置し、世界的課題であるエイズの原因ウイルスHIV、成人T細胞白血病のHTLV-I、肝炎のウイルスHBVなどの「難治性慢性ウイルス感染症」の予防と治療を目指し、その研究教育を総合的に推進します。また、新規の研究強化としては、昨年設置された「生命科学研究部附属健康長寿代謝制御研究センター」に、社会的にも関心が高い老化?健康長寿研究の中核を担っていただきます。医学部附属病院については、本年4月から大学附属として位置付け、経営の効率化と診療業務の高度化を図るとともに、臨床研究を更に推し進めたいと思います。地域の科学?技術?医療の振興に努め、「くまもと」から世界に輝く研究拠点大学を目指します。

3)社会貢献について
 強化した「熊本創生推進機構」をフル回転させ、産業復興や中小企業の復興、共同研究、ベンチャー企業を推進し、バランスのとれた研究、教育、地域貢献を展開したいと思います。昨年、ロイターが発表した「アジアで最もイノベーティブな大学ランキングTop75」では、本学がアジアで30位、国内で10位にランクインしました。今年は更に順位を伸ばし、本学の取り組みが世界的に評価されることを願っています。

 厳しい大学改革の最中でもありますが、2022年度以降の「第4期中期目標?中期計画」に向けて、本学の在り方を検討していくことも今年の大きな目標の一つだと考えます。
 今後とも皆様のご協力とご支援をお願いいたしまして、年頭の挨拶といたします。


平成31年1月7日
熊本大学長 原田信志

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