平成26年度熊本大学入学式 式辞

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本日ここに、御来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長、役員、教職員と共に一同に集い、熊本大学第66回入学式を執り行うことができますことを、大変嬉しく思います。学部学生、編入学生等合わせて1859名、特別支援教育特別専攻科学生21名、養護教諭特別別科学生41名、大学院学生792名、総勢2713名の若き希望に満ちた皆様の一人一人を心から歓迎いたします。この中には14カ国に及ぶ国々からの留学生、66名が含まれています。ようこそ熊本へ、熊本大学へ(Welcome to Kumamoto and Kumamoto University).
入学を果たされた皆様のこれまでの日頃の研鑽と努力に心から敬意を表します。また、これまでその高い志を支えてくださった、保護者の方々、ご家族、ご友人、ご指導いただいた先生方など、数多くのご支援いただいた方々に深く感謝しつつ、支援者の皆様にも心よりお慶び申し上げます。
重ねて、新入生の皆様、入学おめでとう!

熊本大学の歴史と概要

さて、皆様が入学された本学の歴史を少し振り返ってみます。本学は、肥後細川藩が255年余り前に設置(1756年、宝暦6年設置)した、日本初の医療施設である再春館?医学校や薬用植物園としての蕃滋園に源を有する熊本医科大学や熊本薬学専門学校に加えて、嘉納治五郎校長や夏目漱石、ラフカディオ?ハーン(小泉八雲)等の教授陣を有し、二人の首相や寺田寅彦をはじめ数多くの偉人を輩出した第五高等学校(1887年、明治20年設置)の他、熊本師範学校、熊本工業専門学校等を前身として1949年(昭和24年)に、九州の中心のこの学都熊本で、新制熊本大学となったものです。本学は、再春館医学校から数えれば255年を優に超え、また第五高等学校から数えて125年を超える我が国で最も歴史と伝統のある大学です。
現在では、7つの学部と8つの大学院、その他に附属病院、附属図書館、附属学校?園、さらに研究所、教育、研究センターなど、19の施設を持ち、1万を超える学生?生徒と2500人に及ぶ教職員を擁する我が国を代表する総合大学です。今日まで10数万人を遥かに超える有為の人財を社会に送り出してまいりました。卒業生は世界で、また各界で活躍していることは周知の通りです。

熊本大学の理念と目標

もとより、大学の社会的使命は、教育、研究と、その成果を通した社会貢献にあります。しかも、これらの使命を、国際社会を視野に入れて、達成する必要があります。本学は、「我が国を代表する研究拠点大学」としての役割を果たすことを社会に対して約束して参りました。幸い、本学は、昨年度、文部科学省の「研究大学強化促進事業」、いわゆる研究大学の支援対象機関としての認定、すなわち、我が国の約800ある国立、公立、私立、全ての大学の中から我が国を代表する22の研究拠点大学の一つとして選定を受けたところです。本学は、これからも一層の努力を重ね、世界を先導する研究成果を生み出すとともに、社会との信頼関係を揺るぎないものとすることに努めたいと思います。

創造する森 挑戦する炎:社会の人「財」として成長を

本学は、昨年11月の開学記念日に、本学縁のマンガ家井上雄彦氏の揮毫を得て、「創造する森 挑戦する炎」のコミュニケーションワードを学内外に向けて発表させていただきました。本学の特徴、イメージを表す言葉として選定いたしました。このコミュニケーションワードは、本学の、様々な英知を結集して新しい価値を創造し育てることや、いかなる困難の中でも、怯むこと無く、具体的に課題を解決していくという本学の伝統的な姿勢、スピリッツを示しています。本日入学された皆様には、この言葉、気持ちを忘れず、何事にも果敢に挑戦するチャレンジ精神と、失敗に怯まない逞しさをこれからの学生生活の中で身につけていただきたいと思います。井上雄彦氏の力強い書が、本学中央図書館にあります。図書館で是非見ておいてください。

さて、ここで、これから本学で学ばれる皆様に心得て欲しい事柄を述べます。
皆様が、これから本学で学業に励まれる理由は、ただ一つ、「皆様自身が社会の人々の役に立つため」です。皆様もそのように考えておられるはずです。
本学では、学生諸君を社会の単なる一構成要員としての「人材」として育てるのではなく、一人一人を社会の財産、宝としての「人財」として育てたいと考えています。皆様には、自らを厳しく鍛え上げて、「社会の人々の役に立つ」社会の財産として、自の道を極め歩んでいただきたいと思います。
そのために、新入生の皆様には、大学で学ぶにあたって、今日からは、受け身の習うという姿勢から脱却して、自ら学ぶということ、すなわち、主体的、能動的に学び修める学修(Active Learningと言います)が必要です。我が国の文化や歴史、考え方を理解し、また、その良さをしっかりと認識し、事実を直視して、自分の考えを発信できることが必要です。また、文化や価値観の異なる人々とも互いを尊重して議論ができることが必要です。立場や世代の異なる人々ともコミュニケーションできる力を養ってください。これからは、世界的な視野に立って、自分の言葉で語り、情報を発信する力が益々必要になります。特に、国際社会の主要なコミュニケーション手段としての英語をはじめとする外国語を使いこなすことで、世界への広がりを手に入れてください。 是非、世界を舞台に活躍いただきたいと思います。リニューアルオープンした本学の中央図書館にはこの学修を支援するための「動」の空間が整備されています。
皆様には、将来に向けて自ら道を切り拓いていただかなければなりません。何事にも立ち向かい、前に進む力を身に付けることが必要です。大学は、そのための力をつける場です。自らが専攻した専門分野は、もとより、深い教養を身に付けてください。読書をし、課題を見つけ、仲間と議論し、さらに、サークル活動やボランティア活動など、課外活動等を通して、チーム力やリーダーとしての資質を磨くなど、心身ともに健全な社会の人「財」とし成長していただきたいと思います。本学は責任を持って皆様の力を鍛え、磨いていく手助けをいたします。
今年も、「学長特別講義」として新入生の全ての皆様と直接話をする時間を作りました。新入生の皆様には4月から6月までの間に、国の重要文化財で、この3月に日本化学会から「化学遺産」として認定された旧制第五高等学校の化学実験場、そこは、日本の近代化を担った数多くの精鋭達が学んだ125年の歴史を持つ由緒ある場所でもありますが、その階段教室などで改めてお目にかかります。

知の拠点としての本学の先端研究の例

次に、本学の世界に誇るべき研究例について少しお話しします。いずれ、各部局で詳しい話を聞いていただければと思います。本学は、我が国を代表する研究拠点大学ですので、様々な特色ある研究を推進し、また、世界を先導する研究を進めています。その一端を知っておいてください。
例えば、生命科学分野では、発生医学研究所が我が国の全国共同利用?共同研究拠点機関としての役割を担っています。また、我が国唯一のエイズ学研究センターを中心としたエイズ学等の感染症分野、さらに、遺伝子改変マウスなど、先端医療に関連した様々な分野で世界に貢献しています。これらを含めて、「国際先端医学研究拠点」を形成しています。本学の病院や生命系研究?教育部門が存在する本荘地区に、「国際先端医学研究拠点施設」が竣工して、躍動を開始したところです。
自然科学分野では、昨年4月にパルスパワー科学研究所を設置いたしました。瞬間的に発生させた巨大なパワーが様々な分野で新しい学術領域を生み出すと期待が寄せられ、世界を先導する教育研究拠点となっています。一昨年に設置した「先進マグネシウム国際研究センター」では、これまでの常識を覆して、不燃性の KUMADAI マグネシウム合金等が開発され、環境に優しい夢の材料として産業応用も始まったところです。これらを含めて、国際的な研究拠点として、今年度内の完成を目指して「国際革新技術研究拠点施設」の建設が進んでいるところです。
また、地域の防災?減災への寄与を目指した「減災型社会システム実践研究教育センター」や地域の財産でもある水や水環境に関して、アジア?アフリカ諸国をはじめとする世界の水環境をマネージメントできるリーダーの育成にも寄与しています。天草松島にある合津マリーンステーションは、有明海や八代海の干潟生物等の研究や教育の場として全国の教育関係共同利用拠点にもなっています。文学部附属の「永青文庫研究センター」では、世界的価値を有する肥後細川家に伝わる貴重な史資料に関する研究が進められています。その一部については、国の重要文化財としての指定もいただいたところです。他にも数多くの分野で我が国をリードする特色ある研究を実施しています。
今後、これらの研究を担い、発展させるのも皆様です。皆様の参画を期待しています。

大学院入学の諸君に

特に、大学院に入学される皆様には、これから多くの時間を研究生活に割かれることになります。皆様が日々研究に邁進される理由も明確です。新しい価値や真実を見いだし、それによって、社会の発展に貢献することです。全ての研究は社会を発展させ、人々に貢献するためにあります。昨今、研究の成果に関して、社会の信頼を損ねる事態が発生しています。特に、研究に携わる者は、身を律し、高い倫理観の下に研究を進めていただかなければなりません。改めて研究の意味について真剣に向かい合うことが求められます。
今日、世界が解決しなければならない課題は山積です。人文社会科学、自然科学、生命科学等幅広い領域にわたる多くの課題があります。これらの課題を解決していくのもまた様々な学術であり、サイエンス?テクノロジーの力であるはずです。皆様には、世界で誰もできなかったこと、誰もやらなかったことに挑戦して社会の発展に貢献していただきたいと思います。

本学の社会的役割

皆様には、いずれ、国際社会を舞台に活躍いただかなければなりません。そのためには、日頃から国際的な視野を持つことが求められます。国際的な視野の涵養のため、本学は、教育研究に関する国際交流も活発に行っております。現在では、大学間?部局間の協定を、欧米はもとより全世界の29か国1地域、150カ所を超える機関と締結し、中国、韓国、インドネシア、トルコなどに海外オフィスあるいは共同研究拠点等を7ヶ所構えています。
また、本学には、全世界の51カ国におよぶ国々から500名を超える留学生が在籍しています。日本人の皆さん自身も国外に飛び出してください。我が国では、「トビタテ!留学JAPAN」と呼ばれる新しい留学プログラムも創設されました。チャンスは身の回りに数限りなく在ります。皆様が、国際的な環境の中で学び、また、近い将来、世界の仲間と一緒に世界を舞台に活躍されることを期待しています。

新入生の皆様へのエール

本日の入学式にあたり、新入生の皆様には、重ねて、次の3つのことを心に刻んで欲しいと思います。
一つには、高い志とそれを実現するための最後まであきらめない行動力です。社会は皆様の活躍を求めています。皆様は、社会の財産、人「財」であり、自らの存在は社会のため(for the society)ということを忘れないでいただきたい。皆様が社会のために「やれること」を「やらない」ことが、もしあるとすれば、それは、実に「もったいない、残念な」ことでもありますし、社会の期待を裏切ることでもあります。是非、前に踏み出してください。
二つ目は、結束して協力する思いやりの心と高い倫理観です。今日、いかなる困難にも冷静に対処できる日本人の底力は世界から賞賛されています。その根底にあるのは、一人一人の互いの信頼に基づく強固なチームプレー、日頃の自己研鑽に支えられた高度に鍛え上げられた様々な能力、冷静で適正な判断力、高い倫理観に裏打ちされた思いやりの行動などがあります。いずれも大切にしたい我が国の心です。
三つ目は可能性にチャレンジする力です。コミュニケーションワードにある「挑戦する炎」で何事にも自信を持ってチャレンジしてください。人間には、挑戦することで無限の可能性が生まれます。未来は皆様が創るものです。皆様が主役です。そして、是非、学業や部活動など様々な機会を活用して、将来を創り出す知恵と力を大学生活の中で培ってください。皆様の成長のために、まず、自らの良さ、長所を自覚し、それを伸ばして、大きく飛躍されることを期待しています。

繰り返しになりますが、新入生の皆様は、熊本大学の学生として、誇りと自信と行動力をもって前に進んでください。社会の財産としての人「財」として、市民の皆様から畏敬の念を持って迎えられる「憧れの存在」としての「熊大生」であるように常に心がけていただきたいと思います。
留学生の皆様には、それぞれの専門分野の学術を究めていただくと共に、日本語や熊本そして日本の良い面を是非多く学んでいただき、「くまもと」を母国に紹介していただきたいと思います。熊本は、日本の良さが全て揃った街です。熊本の良さを実感いただくとともに、留学生の皆様自身が母国と日本の架け橋になってください。
全ての新入生の皆様には、豊かな自然環境と歴史?文化に育まれたアジアの代表的な学都である熊本の地で皆様が心身共に健康ですばらしい学生生活を創りだしていかれることを期待しています。

結びに、教職員一同、皆様一人一人を、私達の心からの「誇り」として受け入れ、新入生の皆様の輝かしい未来を共に創っていくことをお約束して、新入学の皆様及び支援者の皆様へのお祝いの式辞といたします。

ご入学、誠におめでとうございます。

平成26年4月4日
熊本大学長 谷口 功

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